失意

もう20年近く前になるのだけれど、その当時行っていた教会で、CSをはじめて担当した(教会を知らない人のために説明すると、CSってのは、教会学校チャーチスクール)の略で、日曜日の子どもたちのクラスのこと)。その教会は結構大きかったので、一学年に4〜5人生徒がいて、そこに二人ずつ大人が付く。私の最初の担当は五年生だった。五年六年と二年間そのクラスと付きあったのだけれど、それから十数年経って、その中の一人が、自分と同じ職業に就いたことを聞いた。自分の仕事は、ざっくり言えば、福祉関係というか、他人の世話をする仕事に属するので、責任と信用が不可欠である(自分もそれほどあるとは言えないけど)。かつて小学生だった一人が、自分と同じ世界に飛び込んだことを、正直喜んでいた。そいつが高校生くらいから顔を合わせてはいないし、狭い世界とはいえ今後も顔を合わせる機会はほぼ無いだろうが、同じ世界にそいつがいるということは、頼もしいことだし、言っても狭い世界だから、どっか変なところでひょっこり顔を合わせるかもしれない。そしたらニコニコと握手して、相手が迷惑な思い出話でもしようと思っていた。
そんなそいつが、その仕事を辞めざるを得ないような不祥事を起こしたことを聞いた。その内容から言って、もうこの世界には戻ってこれないだろう。「だろう」じゃない。絶対戻れない。何をやっているんだお前は。俺はお前と会うのを楽しみにしてたんだぞ。同じ仕事に就いていることを喜んでいたんだぞ。自慢してたんだぞ。なのになんだ。いったい何があったんだ馬鹿!
たぶん、地上ではもう二度とあいつに会うことはない。怒ることも罵倒することも謝らせることも和解することも出来ない。悲しい。