もう戻れない

日曜日の午後に、超教派の祈祷会があって出席した。バタバタしていて開始に遅れてしまい、その教会に入った時には既にメッセージの佳境に入っていた。その教会の牧師先生が、東北の被災地に行かれたボランティアの報告を読み上げていた。多分普段からそうなのだろうけれど、熱がこもって早口で、髪振り乱しと言った感じだった。その先生は、震災以来、既に何度か直接被災地に入り、ボランティアをされたり、ボランティアグループを派遣するとりまとめをされたりしている。どうも、その事を話しておられるようだった。その祈祷会の本来の趣旨とはずいぶん違うものであるような気がしたけれど、まあそれはどうでもいい事。
最後の方で、その先生が「3月11日以来、私たちはもう元に戻る事が出来なくなってしまいました。過去に立ち戻るのではなく、立ち上がって前に進まなければなりません。」とおっしゃった。そこで私は取り残される感じを覚えた。「ああ、この人たちは、初めてこういう状況に身を置いたのだ」と思った。私はもう15年前からその場所に立っている。確かに、東北の状況は阪神淡路震災とは比べ物にならない程過酷だ。けれどもあの事が無かったかのように、今回初めてこんな出来事を目にしたかのように語られるのは悲しい事だ。
地震から2ヶ月経った時に、大きな事件が起こった。まだバタバタしている時に、仲間とテレビのニュースを見ていて、正直思った事は「あぁ、これで神戸は忘れられてしまうな」という事だった。さすがにすぐに消えてはしまわなかったけれど、震災と言えどもそれはだんだんと記憶から消えて、無かった事にされていく、何も無かった元に戻っていく。そうあってはならない。